2021.10.29
老人ホームと相続税の関係|施設で亡くなった場合の課税対象や控除、特例について
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この記事の監修者
税理士 蔵重篤史 (蔵重税理士事務所)
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親や親族が死亡した後、複雑な問題になりやすい「相続税」。とくに、老人ホームで亡くなった場合は、一時金の返還金や、控除などの問題が増え、より複雑化しやすい傾向にあります。
しかし、あらかじめ基本的なポイントを抑えておくことで、仮に老人ホームで家族が亡くなっても相続税関連で悩むことがありません。
そこで、今回は親や親族が老人ホームで亡くなった場合の、相続税関連について詳しく解説していきます。
入居一時金と返還金について
老人ホームは、入居する際に事前に「入居一時金」と呼ばれるお金を請求されることがあります。
とくに、有料老人ホームに多いシステムであり、月額料金だけではなく入居前に一時金の支払いを求められることがあるのです。
入居一時金の額は、老人ホームによって差が大きく、0円の場合がある一方で1,000万円以上のケースもあります。
しかし、老人ホームで利用者の家族が亡くなると、返還金として戻ってくることがほとんど。財産として、親族が返還金を受け取れます。
一時金の還付金には相続税が発生
利用者本人が支払った入居一時金の返還金は相続税がかかるので、相続財産として計上しなければなりません。
遺族が返還金を受け取ったら、老人ホームから入金された額をそのまま相続財産として計上する必要があります。
実際、入居一時金は遺産分割の対象となるので、知らずに相続財産として計上せずに、そのまま受け取ってしまうと「脱税」と判断されるので注意してください。
一時金の負担者が家族の場合は課税対象にならないことも
入居一時金を支払ったのが、妻や子どもなど本人以外である場合には、課税対象にならない場合があります。
たとえば、老人ホームを利用する妻に代わって夫が入居一時金を支払い、妻が亡くなった後に夫が返還金を受け取る際には「相続税の対象」にはならないことがあるのです。
しかし、返還金の額や、関係性、状況などによって相続財産と判断するか否かが変わります。そのため、税理士などと相談しながら判断していく必要があります。
「債務控除」の存在
親や配偶者など、亡くなった家族が老人ホームを利用していた場合、知っておきたいのが「債務控除」の存在です。一体どのような控除なのか、以下から見ていきましょう。
債務控除とは
債務控除とは、相続財産の額から、故人にかかった費用を差し引ける控除のことです。
おもに、「故人が秘密で抱えていた借金」や「故人の葬儀にかかった費用」などが債務控除の対象となります。
債務控除を取り入れることで、申告する相続財産を減額することにつながり、結果的に節税効果を期待できるのです。
利用料は相続財産から差し引ける
故人が老人ホームを利用していた場合、これまでに支払った利用料金は相続財産から差し引くことができます。
相続財産は、「入居一時金の返還分」も該当するので、これまでに支払った利用料金によっては、大幅な節税対策になるでしょう。
ちなみに、相続財産は現金や預貯金といったお金のほか、土地や建物、有価証券、生命保険金なども該当します。
相続における特例について/h3>
相続の際に悩む「相続税」。とくに、土地は現金ではないうえに、評価額に沿って相続税を計上し納めなければなりません。
現金や預貯金を相続した場合は、そのお金のなかから税金を納めることが可能です。しかし、土地の場合は手元にまとまったお金がないと、相続税を支払うのは難しいもの。場合によっては、大切な土地を売却しないと相続税が支払えない…といった事態に陥ることもあるかもしれません。
しかし、そんな土地の相続には、以下のような特例が存在します。
一定の条件を満たせば土地評価額を減額可能
土地を所有する親族が亡くなった場合、住んでいた土地に限り一定の要件を満たせば評価額を減らすことができます。「小規模宅地特例」と呼ばれる特例であり、評価額を80%も減額できる内容なのです。
仮に土地の評価額が100万円であれば、特例を適用することで評価額を20万円にまで減額可能。相続税はこの「20万円」に課せられるので、大幅な節税効果を期待できるでしょう。
小規模宅地の特例における要件
前項で触れた小規模宅地の特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
・亡くなる直前に要介護認定等を受けていた
・「老人福祉法等に規定する老人ホーム」に入居していた
・所有していた自宅を賃貸に出していない
・土地を事業に使っていない
・生計別親族が住んでいないこと
・被相続人が亡くなる直前に要介護認定等を受けていた
上記に該当する場合は小規模宅地の特例を受け、土地の評価額を80%軽減できます。
おわりに
本ページでは、老人ホームと相続税の関係について詳しく触れました。
家族が老人ホームで亡くなった後、片付けや整理など、さまざまな作業に追われると同時に、お金の問題も発生します。
今回解説した内容を踏まえ、計画的に相続税の支払いを行いましょう。